私は企業で人工知能に関する研究開発を始めて3年目になります。大学・大学院と研究室に所属して研究はしていましたが、両者には求められるスキルに差があると実感しています。
そこで今回は、企業R&Dで研究開発をする際に必要なスキルについて書いていきたいと思います。
「研究分野に関する知識」や「英語力」などの大前提となるスキルは省略し、私が働いている上で特に必要だと実感し、なおかつ学校ではなかなか教わらない内容に絞って紹介したいと思います。
必要なスキル
まず結論ですが、私が必要だと感じたスキルを以下に列挙したいと思います。
- 問題解決能力
- 企業が求めている技術と現状の技術の差を効率的に埋める
- 自分が勉強すべき内容とそうでない内容を分別する
- コミュニケーションスキル
- 他部署で近しい分野の研究をしている方と知り合いになる
- 勉強会などを主催する
企業の研究開発部は、予算と人的リソースに限りがあるため、自分が好きなように研究を進める余裕はありません。いかに効率良く、企業のためになる技術を開発できるかが重要です。(企業にもよるかもしれませんが。)
そこで大事になってくるのは、「問題解決能力」です。
問題解決能力
- 問題解決能力
- 企業が求めている技術と現状の技術の差を効率的に埋める
- 勉強すべき内容とそうでない内容を分別する
「問題解決能力」とは何でしょうか。GLOBIS の CAREER NOTE で以下のように説明されています。
問題解決能力とは、文字通り「問題を解決する」能力のことです。
具体的には、問題や課題があった時に、問題の本質を見極めて、解決までのアクションプランを計画し、実行していける力のことを意味します。
企業での研究開発の場合、「ある技術を開発したい」というゴールに対して、それを達成するための道筋と期間を考えて実践する能力と言えます。
理系の学生の場合、高校や大学・大学院では、先生に恵まれない限りあまり勉強する機会はないかと思います。
受験勉強の戦略を練る行動はまさに問題解決なので、実は日常生活の中で頻繁に発揮している能力ではありますが、意識的に勉強している方は少ないのではないのでしょうか。
しかし、何も考えずに研究活動を行ってしまうと、実験過程で得られた興味深い結果に引っ張られることなどが原因で徐々に本質から外れていき、気付いたら役に立たない技術を開発していたことに気づくことがあるかと思います。
このような現象は、問題の本質的な原因が何であるかを意識せずに研究を進めてしまったために発生するものです。時間も資源も有限なので、自分が本当に達成したいゴールにできる限り最短距離で到達することは非常に重要なスキルとなります。
また、問題解決能力を身につけることで副次的に色々なメリットも享受することができます。
優れた問題解決能力で導き出したプランがあれば、自分がどんな技術を優先的に勉強すべきかが明らかとなります。忙しい日常生活の間を縫って学習することは大変なので、必要のないスキルの学習は後回しにして、時間を捻出することも可能となります。
私はこの問題解決能力が企業で研究開発をする上で最も重要なスキルだと実感しています。
おすすめ書籍:問題解決能力
「問題解決能力」にほとんど馴染みのない方は、まずは「世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく」を読むことをおすすめします。
中高生でもわかることを目指して書かれた書籍ですが、問題解決の本質を理解するためには十分な書籍です。こちらの書籍を読めば、今後発展的な内容を勉強する際にも役に立つはずです。
より高度な内容を学習したい方は、「東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート 50の厳選フレームワークで、どんな難問もスッキリ「地図化」」をおすすめします。
一つ目の書籍で基本的な実践方法は身に付きますが、より良い解を導き出すためには「フレームワーク」という型に当てはめて思考を整理することが重要となります。フレームワークを使用することで、自分の思考のクセでは導き得なかった解に辿り着くことも可能です。
余談ですが、二つ目の書籍はマッキンゼーに内定した同期が就活の対策として使用していて、非常に良いと勧められた書籍なので、効果も十分にあり実践的だと思います。
コミュニケーションスキル
- コミュニケーションスキル
- 他部署の異なる分野の研究をしている方と知り合いになる
- 勉強会などを主催する
そして、問題解決能力の他に、コミュニケーション能力も必要だと考えています。これはもちろん同僚と良好な関係を築くためにも必要ですが、それ以上の意味があります。
研究開発の世界では、優れたスキルさえあれば、個人でも顕著な成果を出すことは可能です。しかし、そこで得られた技術は一つの分野に留まりがちです。
企業R&Dでインパクトのある成果を生み出すためには、複数の研究分野をつなぎ合わせ、その企業ならではのユニークな技術を創りあげることが求められます。
そのきっかけづくりのためには、他の部署の方がどのような研究をしているのかを把握し、そして自分たちがどのような研究をしているかを知っておいてもらう必要があります。
そのような異文化交流を会社の仕組みの上で行えている場合は問題ありませんが、機会がない場合は自分の力で人脈を作っていくことになるため、コミュニケーションスキルが必須となります。
また、自分のスキルを継続的に磨いていくためには、社内の勉強会に参加することも重要です。一人だと時間がかかりますし、モチベーションが持続しませんよね。
こちらも会社の制度で実施されている場合は問題ありませんが、そうでない場合は、誰かが主導しないと始まりません。
おわりに
いかがだったでしょうか。言われなくても分かるよ、という方も多かったと思います。
しかし、自分の感覚では、理系の学校でこういった専門性以外のスキルの重要性を教えられたという学生は少ないと感じているため、記事にまとめようと思い至りました。
少しでも企業で研究開発をしたいという方の参考になれば嬉しいです。
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